公害等調整委員会『エコキュート低周波音による健康被害原因裁定申請事件』の報告~申請取り下げの報告~

 平成23年3月1日の第4回の審問期日を終えた段階で、「付調停の上申」を行ったことは前回報告したとおりです。申請人が提示した調停案は、エコキュートの移設を中心とし、費用は業者側が負担するという案で、隣家が忍受する不利益は当初の設計デザインの変更による景観上の損失です。隣家側の不利益は決して小さいとは言えません。当然、法律上・道義上の責任の有無を度外視した隣家側の互譲の精神抜きにして合意は考えられない提案だと承知しています。今だから言いますが、この付調停の上申は、公調委側による現地測定の実施を強行されそうになった申請人側が被申請人と公調委に対して投げた『渾身の一球』で、「公調委」での解決の最後のチャンスを賭けたぎりぎりの選択でした(『最後のチャンス』の意味は最後まで読んで貰えば分かるはずです。また、現地測定の強行に抵抗するのはそれ相応の切実な理由があるのですがそれについて今回は触れません)。

 もちろん、公調委は当方の上申を前向きに受け止めて各被申請人に回答を求めました。メーカー側からは費用負担を施工業者とで分担するという前向きな回答が届きました。一方、施工業者は、「法的責任はないから、経済的負担は一切応じられない」「あくまで隣人同士の問題である」と『身も蓋もない』回答をしてメーカー側と誠実さの面で好対照を見せました。こういうときにその企業の本性があらわになると改めて感じた次第です。

 *ここでコメント
  こちらは「法的責任があるから費用を負担して欲しい」とは言ってるのでなく、ただ「歩み寄って欲しい」と言っているだけなのだから、「いやです。歩み寄る気はありません」と素直に言えばいいのに!
 
 拒絶の理由は色々とあるとは思いますが、少なくとも「法的責任がないから」ではないことは明らか。また、「隣人同士の問題」では済まないから、『お上』(内閣総務省)の『お白州』(霞ヶ関の公害等調整委員会審問廷)に公調委側10名、申請人側3名、被申請人側4名総勢17名もの人が集まるという大がかりな有様になっているんだろうに!

  ここで私は申請人(夫婦)は弁護士に委任するまではこの15人に取り囲まれて孤軍奮闘していたことに愕然!

  この15名は弁護士、元裁判官、(元)官僚、医師等の専門家で、一般市民は一人もいません(裁判所と違ってこの「審問廷」、と言うよりもこの「庁舎」に一般人は入れません。とにかく大仰なこと!建物内に入る際の身分チェックに始まり、審問開始時に全員で起立して委員をお迎えし礼をする儀式など、手続のあらゆる局面でいちいち感じる『大仰さ』はいったい誰のためなのでしょう?)。

 そして、一番肝心の隣家側から、申請人の案は「一番設置したくない場所である」と完全拒否の回答が届いて調停期日が開かれる前にあっという間に申請人の希望は潰えました(隣家にとって「一番設置したくない場所」であることを承知した上での調停案でしたから、予想どおりと言えばそうなのですが、一縷の望みはもってましたから、やはり失望は大きいものがありました)。

 しかし、ここで諦めないのが申請人(本人です、代理人ではありません、念のため)の偉いところです。私は依頼者の強い意向を受けてある有名メーカー製造による電気温水器への交換という調停案を最後のチャンスとして再度調停の上申をしました。実は、この方法は現実に隣家同士で話し合って解決した事例がある手法であり、私も非常に現実的かつ効果的な解決方法として注目しているところです。

 平成23年6月10日、審問廷やはり18人が集まって、手続き上は申請人が提出した2回分の調停案を踏まえた「進行協議」という手続が行われました。言うまでもない感じで協議が進んで、いずれの調停案も一刀両断でばっさり切られてしまい、前回報告した公調委主催の現地測定の問題に話が移ろうとしたときに、私は懐に忍ばせていた取下書を出して「本申請を取り下げます」と宣言しました。流れ的には大変唐突なことで(唐突であることは法的に何ら問題ありません)その場に居合わせた人はみんな(さっきの18人)意表を突かれたと思いますが、申請人側は既に予定していた行動であり、予想どおり『慰留』されそうな雰囲気になりましたが(『何も(取下書を)ここで出さなくても後でいいでしょう』など)無理矢理に取下書を事務方に提出して審問廷を退席しました(もちろん勝手に出てきたのではなく、一応委員長の「本日は終了します」の声を聞いてからです)。まさか、その日に申請を取り下げるとは誰も予想していなかったのでしょうね(しかし、私はこの取下げの自由が申請人に認められていることは申請人の立場を守る上で非常に重要なことだと思っています)。

 申請の取り下げは、一見、退却であって消極的な姿勢と思われるかも知れませんが、実は極めて積極的な行動であり、中々できることではないのだろうと思います。現実に救済される何の保証もない当事者が自らの権利は自らでしか守ることは出来ないという立場において、自らの姿勢を貫くこと自体に価値を置いて「腹をくくって」初めて取れる行動だからです。

 ここで素直な読者は「公害調整委員会によって解決して貰えばいいのにどうして取り下げるのか」と疑問を持つかも知れません。それは第3者的な『楽観主義』を背景とする感想です。当事者の立場にある我々には、『楽観』は許されず、現実主義が要求されるのです。

 現在は、メーカーと施工業者を被告とする訴訟提起に向けて準備中です。製造物責任法と不法行為(民法第709条)に基づく請求です。提訴次第、ブログで報告しますのでご注目下さい。

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