エコキュート低周波音による健康被害事件、民事訴訟で和解成立の朗報

 ~エコキュート低周波音の被害者に光明をもたらす画期的な和解~

~原告の悲願であった『エコキュート撤去』が実現~

前橋地裁高崎支部で平成23年7月15日提訴から約2年以上にわたって審理が行われていた裁判において、完全な被害救済に繋がる和解が今年11月18日成立しました。

 和解の内容は、①エコキュートの撤去、②エコキュートがあった場所に電気温水器(日立製)を設置、③エコキュート撤去と電気温水器設置にかかる費用を原告に負担させない、という3点が和解の要(かなめ)です。原告と被告ら(隣人及びサンデン、大和ハウス)との間での金銭の授受は一切ないことも和解内容に含まれます。

 和解についてコメントする前に、和解後の原告の状況を報告します。

 12月11日に撤去及び設置工事が完了し、翌日から新しい電気温水器の稼働が始まりました。電気温水器の稼働に伴う低周波音の原告宅への浸透状況について、稼働開始から約2週間を経過した12月26日時点で、「電気温水器が発する運転音はほぼ聞こえず、感じない状態になった」「5年前の状態に戻り、身体の方が戸惑っているような感じです」という大変嬉しい報告を受けました。        

 正直言いますと、新しい電気温水器の運転音が原告を悩まさないという保証はありませんでしたから、はらはらする気持ちで報告を待っていました。これで思い残すことなくブログで報告できる次第となった訳です。

 この日立製電気温水器はかなりの高級品で、日立製の電気温水器では最高グレードです。エコキュートと比較すると一長一短です。例えば、エコキュートの方が価格は高い反面、ランニングコストが安い。一方、電気温水器は故障がエコキュートより少なく、耐用年数も長い(1.5~2倍)。 このように経済的な優劣を決するのは困難です。最近、様々なメデイア(例えば、『家電批評』)で、「オール電化、エコキュートは節約にならない」と警鐘を鳴らしています。 
 
 もともと、原発の深夜電力のはけ口として始まったエコキュート戦略は、既に頓挫したという印象は拭えません(当然、私はバリバリの『反エコキュート派』ですからこういう言い方になります)。しかも、製品としても優劣付けがたいのですから、エコキュート運転音問題が発生している現場では、あまりエコキュートにかかわらず、電気温水器への転換を前向きに考えて頂きたいと思います。

さて、この辺で和解のコメントに移りたいと思います。

 この和解はいくつかの観点から高い評価ができます。何より、平成21年12月に始まった公調委以来、全面的に対立してきた大和ハウス、サンデン、隣人と原告の4者が、それぞれ互いに譲歩し合い、協力を約束して、和解に至ったことです。 大和ハウス、サンデンという大企業が目先の経済的利益や企業側の「面目」等を取り敢えず捨てて、現実に起きている被害を救済するために協力したという事実は正に『大事件』であり、この和解で示した両業者の姿勢に対しては高く評価しています。なぜなら、盛岡や横浜の裁判の当事者にはこのような姿勢は微塵も見られないまま結審に至っているからです(大和ハウスは盛岡裁判の当事者としてカブっていますが、相方の被告(エコキュート製造メーカー)が異なるので目を瞑ります)。

 次に、画期的な点は、勝訴しても被害回復に繋がるとは限らないことを考えると(例えば、僅かな慰謝料のみで音はそのままという可能性がある)、今回の和解は、完全な被害救済に至ったという点です。エコキュートという『元凶』がなくなるという点では最高の解決と言えます。エコキュートの移設は、『元凶』の移設であり、加害音の低下に止まり、消滅に至らない可能性があるからです。

 現在のところ、私が関わった事案ではまだエコキュートに関する限り、移設で解決した事案を経験していません(入間市の事案は移設による完全解決ですが全く状況が違います)。従って、少なくとも現時点では、電気温水器への交換は最善の策と言えそうです。

 今回の和解は、かなり遅れて隣人への提訴を行い、丁度その時期に裁判長の交代があったことが大きく影響しいていると感じます。当初は対立姿勢が強かった業者側(特に大和ハウス)が新しい裁判長が和解を打診した段階でかなり軟化したこと、非常に感情的な対立があった隣人も電気温水器への交換に前向きな姿勢を見せてくれたことで一気に和解への機運が生まれました。

 一番大事なことを忘れていました。類い希な原告本人の忍耐強さと意志の強さがなければ和解までたどり着くことも困難だったでしょう。被害を受け続けている状況下で冷静に資料を収集し、弁護士との強いコンビネーションを維持しながら、それぞれの大事な局面で冷静な決断をしてきました(例えば、公調委でのこと、公調委による測定拒否→和解決裂→取り下げ→間髪を入れず提訴、という流れは我ながら見事なコンビネーションで、長い弁護士としての訴訟活動において希有なことでした)。

 エコキュートに限らず、工場や店舗等による低周波音で健康被害を受けている方々には、このケースを参考にして貰えたら大変嬉しく思います。諦めないこと、悔いを残さないように今できることをやってみること、結果や損得を考えたら恐らく足は止まってしまいます。いい結果は後から、思いがけずやってきます。この和解がいい例です。何もしなければ、いい結果がやってくる可能性は最初からありません。

 私は、低周波音公害の問題がいつか音を立てて解決の方向に動き始める時が来ると信じています。それが来年か、10年後か、50年後かは分かりませんが。

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