<エコキュートからガス給湯器への交換による解決事例~令和2年度>

 この報告事例は,エコキュートをガス給湯器に交換して交渉が終了した事例として特に目新しいものではありませんが,同種事案の対応について参考になる点が多々あるのでブログにあげることにしました。

 茨城県内の某市簡易裁判所で令和2年度に,4回の調停期日を経て解決に至った事例を報告します。このケースでは健康被害の重篤性と緊急性に鑑みて,早期解決を図る目的で,私の基本的な受任ルールとは異なる対応をしました。エコキュート・エネファーム稼働後で健康被害発生後の委任を受ける条件として,必ず,測定の実施と測定結果が一定ラインを超えることを基本ルールとしてきましたが,一般の被害のレベルを超えた状況であったため例外的な扱いをすることとしました。被害を受けている家族のうちの一人がこれ以上耐えられない切羽詰まった状況にありました。測定を経ずに交渉に入った点が大きな特徴といえます。
 測定データを提示できない点は,どうしても,交渉上,弱みになることは避けられませんし,万一,交渉が奏効しないで終了してしまった場合に,その後が進めにくくなりますので,やはり,例外的な処理であることは間違いありません。なお,本事例は,双方の建物の壁面が向かい合う形で約6mの距離の位置にヒートポンプが設置されていますから,測定しても私の基準をクリアーできる程度のデータは計測できた可能性はあったと思います。

 次の特徴は,測定を実施していないことにも関連しますが,相手方の代理人から過去の裁判資料,過去の被害事例の医療記録,本件事案に即した資料等の提出を求められ,さらに,本件機械の設置方法や使用方法の誤りを具体的に指摘せよ,と要求されたことです。勿論,可能な限りで説明と資料提出を行い,その結果,相手方の代理人との間で,解決に向けた協議が始まりました。相手方に代理人弁護士がついたメリットが端的に表れたケースと言えます。この代理人は,依頼者から基本方針を託されて,当方の請求が適正なものであれば,それに応ずる方向で対処し,不当な要求であれば撥ね付けるという両方向の舵取りを行ったと言えます。 

 特徴の3点目は,当方が求めた移設案は,距離が遠すぎるという理由で(多分約10メートル位)断られ,一般的なガス給湯器に交換する方向で解決に至りました。この移設案の距離は,私のこれまでの解決事例では問題がないはずですが,たまに,製造業者(パナソニック等)が「責任が持てない」と言ったことが移設のネックとなった経験があって解決の障害になることは現実にあります。但し,この件で距離以外の別の理由があったかどうかは分かりません。

 4点目は,結果的に,依頼者がガス給湯器の交換に要した費用を負担したことです。結果的に,機種交換という理想的な解決策に応じてくれた訳ですから,本件の隣人の対応は誠実であったと言えますが,交換の場合についてまわる費用負担の問題はやはり依頼者にとってはややしこりを残すことになってしまったことは否定できません。移設の場合は,15万円程度で済みますが(以前のブログに書いた某家電量販店の40万円は法外です),交換の場合は,その数倍の新機種購入費用を関係者の誰かが負担せざるを得ません。これは,設置した業者が負担するのが筋であると思いますし,現実に施工業者が負担した事例も少なかくありません。     費用負担の点では依頼者に不満を残す結果となりましたが,ヒートポンプが及ぼしていた健康被害の回復という点では交換によって解決をみたことは間違いなく,同じ問題に悩む被害者の方々には検討の一助となると思います。